立川談春独演会 談春七夜 東雲
@東京芸術劇場小ホール2
立川談春 前説
柳家三三 転宅
立川談春 粗忽の使者
仲入り
立川談春 芝浜
折り込みチラシと一緒にプログラムも配布。これには本文で芝浜を演ると書いているのだが、出番のところにネタ名だけ空白になっている。談春の落款がある5名は色紙をもらえる。色紙には「第一夜 東雲」とか書かれてる。舞台には「東雲」と談春が書いた暖簾が吊ってあり、ロビーでは談春の写真が展示されていた。
前説で談春の名人論。談春曰く「名人の道を今日からスタートする」という会で、観客が名人を作るのだそう。そして七夜の「志ん朝ごっこ」でもあると。調べてみたら、志ん朝が七夜に挑んだときは中休みが2日間あったというのに気付いた話はおかしかった。でも、中休みがあったっていうのは本当だろうか。
三三の転宅、談春が先輩として自分の次の期待を込めて三三を呼んだのに対し、「只今は大変テンパった挨拶で」と切り返すのはいい度胸。
談春の粗忽の使者、赤井御門守が治武太治部右衛門にいい役を与えようとしたためにこんな騒動になった、という入りから楽しい。思い出してと言われて思いだせるような男ではない、と自ら言い張る治部右衛門。ようやく自分の名前を思い出した治部右衛門に「ご高名はかねがね」と呆れる田中三太夫。しかし、後から出てくるトメッコが全部さらってしまう。田中三太夫を隣の間へ追い払い、治部右衛門を「こっちこい!」と呼びつけて治部右衛門にケツをまくらせる。このトメッコのやんちゃさったらなく、見ていて気持ちがいい。トメッコにくぎ抜きで尻をつねられ、オオオ!と治部右衛門が思わず唸ると、「何が起きているのだ!」といても立ってもいられない三太夫。このドタバタを引き起こしたトメッコがMVP。
談春の芝浜、マクラなしで客の拍手が鳴り止まぬうちに始まっている。おそらく観客のほとんどは芝浜の筋を知っている。談春がどう芝浜を咀嚼し、創ったのかを観るのだ。気合いの入る一席、緊張する客席。浜で勝五郎が顔を洗うところでは思わず談志の名シーンを思い出す。勝五郎は四十二両入った革財布を拾って家に帰り、飲み残しの酒を飲んで寝てしまう。談春は、勝五郎の女房の苦悩する心情にスポットライトを当てた。勝五郎の女房は不安で、それでいて意を決したように恐いくらいの表情で勝五郎を起こす。リアルだったら、人を騙すには吹っ切らないとできないものではないかと思うのだが、ここでは女房が勝五郎を騙すところに女房の苦悩がありありとわかる。女房は勝五郎に夢だったんだと無理矢理信じ込ませようとする。「私がネコババしたとでも言うのかい」「革財布をもっといで」「了見は腐ってるの?」と言い。そして勝五郎を励ます。勝五郎「夢だったら大変だ」に、「私が返してみせます」と言い切る。賢女なり貞女なり、勝五郎の女房。
三年目の大晦日、隠居から聞いた除夜の鐘が百八つである訳を女房に語る勝五郎。このシーンを入れることで、死のうとまで思っていた勝五郎に生まれた余裕と大晦日の幸福な風景が見えたような気になる。勝五郎が幸せだと言い、女房も幸せだと言うと、「今が並で今までがひどかった」と言う勝五郎に、あのことを言う決心をする勝五郎の女房。女房の話を、はじめは「騙したのか」と怒りながら聞くが、ついには納得する勝五郎。「許します、許すよ」「私も許す」。照れた勝五郎に談春がダブる様。「時の声でも上げて飲め」のセリフもいい。
ただ、夢だと言って騙そうとするには、いかにも騙すという女房には違和感があるし、勝五郎が許す下りがくさ過ぎないか、と思う。粋というより、甘ったるい感じがする。
粗忽の使者はベストな出来だったが、さらに変化した芝浜は大賛成とまでには到らなかった。
明日は「雪」。夢金か。